大学時代を過ごした福岡市。中央区天神の交差点では『通りゃんせ』の音楽が信号音として流れていて、まさにご当地アイデアといったところで、ちょっと粋だと感じていた。
その記憶からか、天満宮に向かう時、脳内でこの音楽が自然と流れてくる。「仁淀ブルー」で有名になった仁淀川右岸、土佐市から吾川郡いの町へ抜ける土佐伊野線。その道沿いに、いの町大内の天満宮の鳥居がある。 かつては受験生のための合格祈願もあって、九州の太宰府天満宮へよく行っていたものだが、近年はコロナ禍にあって、しばらく参拝できていない。そういう理由もあり、以前から気になっていた近場の天満宮へと向かった。 「天神さま」といえば一般的には、学問の神様として祀られる平安時代の菅原道真(845-903年)公のこととされているが、本当だろうか。八幡宮に次いで、高知県で2番目に多い神社が天満宮である。『鎮守の森は今』(竹内荘市著、2009年)には、県内の144社が紹介されている。 かつて土佐国(高知県)は、菅原道真に連座して長男の菅原高視が左遷されている。また菅原道真が立ち寄ったという伝承もあり、小筑紫といった地名も存在する。確かに無関係というわけではないが、そこまで道真公を信仰する必要があるだろうか。 菅原道真については尊敬すべきところもあり、学問の神様としてあやかりたいところではあるが、これだけの広がりを見せる天神信仰が単なる一個人を崇拝するものとは考えにくい。もしかすると、道真以前から北部九州を中心として存在していた、歴史的に古い淵源を持つ信仰なのではなかろうか。 真理探究の道は細く険しい。「ここはどこの細通じゃ 天神さまの細道じゃ」――『聖書』にも「狭き門からはいれ。……命にいたる門は狭く、その道は細い。そして、それを見いだす者が少ない」(マタイによる福音書7章13・14節)とある。 ふと、天満宮への道脇に白梅の木があるのが目にとまった。東日本では雪。高知県では雨となった日曜日。たくさんのつぼみの中に、すでに咲いている花があった。天神さまのご利益かどうかは分からないが、翌日、予期せぬ2人の大学合格の嬉しい報告を聞くことになろうとは……。 PR |
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