鼠年であった2020年11月の高知新聞に、次のような記事が出ていた。世はまさに、空前絶後の『鬼滅の刃』ブームである。
竹ちくわは、人気漫画「鬼滅の刃(きめつのやいば)」の主要キャラの禰豆子(ねずこ)が口にくわえている竹をヒントに同社が商品化。子どもたちは早速、ちくわを口にくわえ「禰豆子になった気持ち!」と喜んでいた。(2020.11.12) 実は、高知市長浜の㈱土佐蒲鉾本社の近くに、ついに本命『鬼滅の刃』プチ聖地を発見することができた。高知県にも竈門神社(高知市長浜5792)があったのである。これまでに紹介した「竈」「竈戸」「竈土」でなく、竈門炭治郎や竈門禰豆子と同姓ーー同じ漢字を使用した正真正銘の「竈門神社」なのだ。 小社でありながらも「昭和十四年九月吉日」付で鳥居が奉献してあり、花などが供えてあったりと、地域の人々から大切に祀られている様子だった。 主人公の竈門炭治郎は鬼殺隊に入る前は、炭を売って生計を立てていたようであるから、大分県に伝わる炭焼き小五郎伝説(真名野長者伝説)をモチーフの一部としているように思える。大分県別府市の八幡竈門神社が『鬼滅の刃』3大聖地の一つになったのも分かる気がする。 そうすると竈門炭治郎の竈門(かまど)とは炭焼き窯のことなのだろうか。竈門神社が祀る竈ノ神とはいかなる存在なのだろうか。 「竈神を祭る事は我邦では極めて古い所からあったもので、古事記に大歳神が天知迦流美豆姫を娶って生んだ子の中、奥津日子神、奥津比売神の二神が即ち諸人の拝する竈であるといふことになっている。」(『神道史』清原貞雄著、1941年)とあるように、奥津日子神・奥津比売神の二神を祭神としているところが多い。 『長宗我部地検帳の神々』(廣江清著、昭和58年)によると、荒神社は16社(安芸4、長岡1、土佐1、高岡3、幡多7)である。地検帳には記載されない神社もあるが、少なくともこれらの荒神は16世紀以前に遡る歴史を持つ。 この荒神が、個人の家の竈の神として祭られるものならともかく、社として一般の人々に祭られるのはなぜであろう。先人の研究は参考にはなるものの、謎は深まるばかりである。竃の神には奥津日子神、奥津比売神あるいは迦具突知神、火産霊神などが当てられているが、廣江清氏が言うように、これらは「神仏分離の際あてられたもので、本来は単に火ノ神であったのであろう」との指摘は妥当かもしれない。 『鬼滅の刃』19話で、竈門家にヒノカミ神楽が伝承されていたことが描かれている。九州の竈門神社の縁起等を調べれば、より深淵なるルーツに迫れる可能性はありそうだ。 PR |
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