10月13日、高知県立歴史民俗資料館で土佐史談会理事の朝倉慶景氏による「本能寺の変と斎藤津戸右衛門の居所について」と題する講演会が開かれた。その内容についても紹介したいところだが、講演会後に向かったのは歴民館のある岡豊山とは県道を隔てた北側の岡豊別宮八幡宮(南国市岡豊町八幡)。以前に「岡豊別宮八幡宮の境内社に高良神社は存在するか?」というタイトルで記事を書いた。その時点では、『皆山集①』に登場する豊岡八幡宮について、高良神社を含む摂社十数社が記載されていることから「岡豊別宮八幡宮の境内社の1つが高良神社である可能性は高い」とした。
前回は東側から車で登り、神社の裏側の広場についたが、今回は南側の一の鳥居から徒歩で正面突破を目指す。石段途中の恵比須神社や大山祇大神などを確認する目的もあった。参道の石段には実った栗の実が落ち、はじめはゆるやかだが次第に傾斜を増す。登りきったときには足もガクガク。息を切らしながら参拝を済まし、現地を実見する。
本殿の西側には竹氏宮、岩清水宮など境内社7社が並べられている。本殿の北東に1社+3社の境内社。龍王宮、若宮社、瓦ノ宮社などが祀られている。この「瓦ノ宮社」こそが高良神社のことであった。
本殿の西側には竹氏宮、岩清水宮など境内社7社が並べられている。本殿の北東に1社+3社の境内社。龍王宮、若宮社、瓦ノ宮社などが祀られている。この「瓦ノ宮社」こそが高良神社のことであった。
『南路志 第八巻』所収、寛永十三年(1636年)八月十五日付けの「長岡郡別宮八幡宮之記」に、次のように記録されている。
○長岡郡別宮八幡宮之記
一御宝殿ハ三間四面 舞殿長床一同東之方若宮有、五尺間ニ三間四面一末社之事 戌亥之方ニ稲荷之社、其東ニ竹氏之社、其東鎮守、其東丑ノ方ニ松尾春堂二社ヲ一棟ニ立、寅ノ方ニ岩清水社、卯ノ方ニ龍王、其南桜田ノ社、辰巳ノ方ニ鐘楼堂有。南ノ坂本ニ鳥居、東ニ御幸門、関杖有。其東道ヨリ北ノ上ニ瓦ノ宮アリ。又東ノ川ノ渡上國分ノ分ニ神輿休社、大木ノ本有。放生會御幸之事 右二所社ニテ、神輿ヲ舁居、神楽ヲ備也。
この記録は江戸時代初期のことであるから、境内の配置などは現在とは大きく異なっている。火災を経験し、再建されているだろうから、境内社もまとめられて合社となったのだろう。かつては東側に御幸門があり、「其東道ヨリ北ノ上ニ瓦ノ宮アリ」とされ、その場所で放生会の神楽を舞ったと読み取れることから、「瓦ノ宮」が数ある境内社の中でも特別な位置づけにあると考えられる。
そして『皆山集①』との比較により、この「瓦ノ宮」こそがイコール「高良神社」であることが判明する。かつて高良神社は「瓦ノ宮」あるいは「川原社」などと呼ばれていたことがあったのだ。1年半越しの宿題にやっと答えを出すことができた。岡豊別宮八幡宮の境内社として、間違いなく高良神社(瓦ノ宮社)が実在していたのである。
そうなると、次に問題となるのは川原神社(南国市福船字寺屋敷)である。一般的には物部川の近く、川原に鎮座しているから川原神社と考えられていたが、それは神社の名称としてはあまりに安直すぎないだろうか。
「磨かざりせば光ある玉も瓦に等しからまし」
高良玉垂命を祀る高良神社の輝きも忘れ去られて、瓦や川原の如くに扱われてしまっているとしたら……。本来の光を取り戻すことはできるのだろうか。
高良玉垂命を祀る高良神社の輝きも忘れ去られて、瓦や川原の如くに扱われてしまっているとしたら……。本来の光を取り戻すことはできるのだろうか。
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大学時代に『「邪馬台国」はなかった』(古田武彦著)を読んで、夜寝られなくなりました。古代史に関心を持つようになったきっかけです。
算数・数学・理科・社会・国語・英語など、オールラウンドの指導経験あり。郷土史やルーツ探しなど研究を続けながら、信頼できる歴史像を探究しているところです。
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