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 多元的「国分寺」研究サークルや方位の考古学などで知られる「肥さんの夢ブログ」で、高知県の秦泉寺廃寺と大寺廃寺の素弁蓮華文軒丸瓦が紹介された。ついに四国に研究の手が伸びてきたというところだろうか。

 大寺廃寺跡の軒丸瓦については現在、高知市春野郷土資料館に展示されていて、年代は「8世紀」と紹介されている。同資料館のホームページには次のように説明されている。
軒丸瓦

軒丸瓦(のきまるがわら)

古代寺院跡である大寺廃寺跡〔おおでらはいじあと〕より採集されたもので、有稜線素弁八葉蓮華文〔ゆうりょうせんそべんはちようれんげもん〕がほどこされています。こうした瓦の出土事例は、高知県でも数少ないものです。
<高知県立歴史民俗資料館所蔵> 
 本来なら素弁蓮華文軒丸瓦は単弁や複弁よりも古く、7世紀とするのが通例である。それをあえて8世紀とした根拠はどこにあるのだろうか。おそらく『春野町史』(春野町史編纂委員会、昭和51年)P61の記述によるものと推察する。
岡本健児氏は、仲村郷の西分付近を郡衙所在地と考えられているようである。同氏著『高知県史考古編』には、西分の大寺廃寺すなわち『長宗我部地検帳』時代なお存在した左の、
 大寺寺中
      同村 大寺寺中
 一所参代 下薬師堂床三間四面ヤシキニ取 喜津賀分
を取りあげ、この大寺が「和名抄」の中村郷を伝える地域にあるうえ、さらに発見された古瓦には、単弁蓮華文の鐙瓦があり、また平瓦には凸面に縄目文、凹面に布目を付けたものがある。丸瓦は有段式の玉縁式であるが、これら「その発見された古瓦類から、その年代をだいたい奈良時代、それも国分寺ができて以降と考えたい」とされる。なお右の大寺廃寺を安芸郡奈半利町コゴロク廃寺、高知市秦泉寺廃寺とともに「郡衙関係の寺院と考えてよいのではないだろうか」と推定され、国分寺と国衙関係同様に、「郡衙と密接な関係を持つ寺院であろう」と結ばれる。
 しかし、『春野町史』の記述は単弁蓮華文の鐙瓦や布目瓦などについての考察であり、昭和50年代という段階ではまだ研究も進んでおらず、国分寺建立以前とする判断はできなかったのだろう。ところが、『ものがたり考古学―土佐国辺路五十年―』(岡本健児著、1994年)の説明には、その後の研究の成果が反映されているように見える。

秦泉寺廃寺と大寺廃寺

 両方の軒丸瓦の蓮華文様には、花びらの中に線が入っています。そして子葉が描かれていません。このタイプの蓮華文様の入った軒丸瓦を、考古学の専門用語で「有稜線素弁八葉蓮華文軒丸瓦」といいます。
 こうした瓦の文様は百済(四世紀前半から663年の朝鮮古代の国)から日本に入ってきたものです。ところが、飛鳥寺とか四天王寺、焼失した法隆寺にみられる典型的な百済様式とは文様が少し違っています。百済様式のものには花びらに線が入ってないのです。
 「有稜線…」は六六三年に朝鮮半島で百済が滅び、高句麗の時代に一般化します。高知の秦泉寺廃寺と大寺廃寺の瓦の文様は百済の時代の終わりごろに、高句麗の影響を受けて作られたものだと思われるのです。作ったのは百済が滅んで国を追われた朝鮮の人たちだったのでしょう。瓦の分析により、この二寺院はいまのところ、高知県下では最も古い寺ではなかったかと推測できます。
 近年、地方寺院研究が大きく進展してきた。地方寺院の成立は、七世紀後半のいわゆる白鳳期に爆発的に増加する。『扶桑略記』には持統朝には545寺あったと記されており、全国のこの時期の寺院遺跡数はその数をはるかに上回っている。秦泉寺廃寺と大寺廃寺はその中に含まれる、いわゆる国分寺に先行する古代寺院であったことが分かる。それらは当然ながら、聖武天皇の詔(741年)以前から存在していたことになる。
 多元史観に立ったときに、これほどの多くの古代寺院群がどのような目的で建てられたのか。果たして九州王朝と何らかの関係があったのか。大和朝廷一元史観に縛られない今後の研究の進展が期待されるところである。


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 大学時代に『「邪馬台国」はなかった』(古田武彦著)を読んで、夜寝られなくなりました。古代史に関心を持つようになったきっかけです。
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