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 松山市内には3つの高良神社がある。生石八幡神社(高岡町917)、高家八幡神社(北斎院町295)の境内社については、かつて「愛媛県の高良神社④⑤」で紹介した。そして今回は残る一社である伊佐爾波神社(桜谷町173)境内末社の高良玉垂社(祭神:武内宿禰)の登場である。と言っても、実は以前「高良神社にまつわる菊と蕨」というタイトルで少し触れてはいる。
 
 長野県の吉村八洲男氏の研究によると、筑後一宮・高良大社の御祭神「高良玉垂命」を祀る「高良社」が信州に濃密分布しており、蕨手文様も多く発見されている。そこに古代九州王朝(特に磐井の乱)と信濃国と繋がりを見出そうとしているようだ。詳しくは、ブログ『sanmaoの暦歴徒然草』に掲載された"「科野からの便り」(6)蕨手文様総括編"(2019/12/07)を参照してほしい。
 ただし、科野の「高良社」全ての祭神に「誉田別神」の影があり、九州とは異なるかーーとする吉村氏の分析についてはやや片手落ちと感じる。それは伊佐爾波神社を訪れたときにも明瞭になった。

▲回廊内の高良玉垂社と蕨手燈籠

 ここの高良神社は伊佐爾波神社の回廊内に鎮座しており、蕨手燈籠があるという情報をつかんでいたので、ぜひとも見ておきたいと願っていた。その内容について「松山市ホームページ」より抜粋しておこう。

「伊佐爾波神社、附 末社高良玉垂社本殿、末社常盤社新田霊社本殿、石燈籠、棟札」について

 ともに境内社で、廊下の左右に内に向かい合って建てられる。当社を造立した藩主松平定長や竹内宿祢ほかを祭る。建物は一間社流見世棚造り、桧皮葺。
 柱は土台の上に建ち、身舎が円柱で頭に粽(ちまき)を付け、向拝は方柱で、ともに出組斗きょうを置く。正面向拝の水引貫の上には板蟇股(いたかえるまた)が置かれる。木部の彩色は、前掲の社殿に準じる。
 石燈籠は、両末社の脇に建てられる。総高240cm余り、笠・火袋・中台・竿・基礎はいずれも四角形で、笠の四隅には蕨手を持ち、竿に「道後八幡宮神前・寛文七丁未年五月十五日」の刻銘がある。

 令和元年台風10号接近の前日の夕刻、隣接する道後温泉には目もくれず、裏の駐車場から伊佐爾波神社境内へとすべり込んだ。本来は正面から長い階段を登って参詣すべきところであるが、もう少し遅ければ門が閉まるところであった。

 カギをかけに来られた女性神職に質問すると「高良神社は八幡様とセットみたいなものですから……」といった話が聞けた。高良神社を調べ始めた時から感じていたこと(愛媛県の高良神社①参照)ではあったが、この認識は神職といえども、誰もが熟知しているわけではない。高良玉垂社を大切に祀っている伊佐爾波神社であればこその応対ではなかったか。残念ながら、いつ境内社として取り込まれたかまでは分からない様子だった。ということは、少なくとも明治期の神社整理等ではなく、もっと古い淵源を持つ可能性が高い。
 少しまとめてみよう。
①高良神社の多くは八幡宮の境内社として鎮座する。
②近年の神社整理によって合祀されたものは少ない。
③高良神は八幡第一の伴神と解釈されてきた。
④八幡宮の配神として応神天皇(誉田別神)とともに高良玉垂命が祀られている神社もある。

 これまでの調査から「高良神社の謎」が少しずつ解けてきそうである。高良神社は八幡宮勧請と同時、あるいはそれ以前から存在していた可能性がある。そして高良神社と八幡宮の地位の逆転が九州王朝から大和朝廷への政権交代と連動している……。まだ確証はないが、そのような仮説が浮上してきたのである。

        

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 大学時代に『「邪馬台国」はなかった』(古田武彦著)を読んで、夜寝られなくなりました。古代史に関心を持つようになったきっかけです。
 算数・数学・理科・社会・国語・英語など、オールラウンドの指導経験あり。郷土史やルーツ探しなど研究を続けながら、信頼できる歴史像を探究しているところです。
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