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 高知県東部の安芸地方で、高良神社及び高良玉垂命に関連している神社は、現在確認しているところ次の7社。
①芸西町和食の宇佐八幡宮境内社・高良神社
②安田町安田の安田八幡宮境内摂社・若宮神社
③安田町東島の城八幡宮
④田野町淌涛の田野八幡宮
⑤室戸市羽根町の羽根八幡宮境内社・高良玉垂神社
⑥東洋町野根の野根八幡宮境内社・高良玉垂神社
⑦東洋町河内の甲浦八幡宮境外摂社・高良神社
 6つまでは過去のブログで紹介しているが、まだ一社だけ実見できずに漏れていたところがあった。③安田町東島の城八幡宮である。やっと現地を踏むことができたので、今回紹介することにしたい。

 安田城(泉城)は安田川の東岸にあり、南西に伸びた尾根の先端頂部の城山に築かれている。築城年代は定かではないが、延文2年・正平12年(1357年)頃には安田城主として安田三河守信綱の名が残っている。安田氏は惟宗を祖とする。信綱の後は益信、七郎次、親信、鑑信と続き、安芸城主安芸氏に属していたが、永禄12年(1569年)長宗我部元親が侵攻するとこれに降った。鑑信の後は千熊丸、又兵衛、泰綱、弥次郎と続き、安田弥次郎は長宗我部盛親に従って関ヶ原合戦で戦功を挙げ、大坂の陣にも大坂方として参陣したが、大坂城が落城すると和泉へ逃れ、のちに剃髪して波斎と号した。
 ナビを頼りに近くまで行くと案内板があって、安田城と大木戸古墳についての解説があった。「鎌倉時代永仁3年(1295年)佐河四郎左衛門盛信が、安田川流域を制圧して守護となった。……城山の最上段(詰の段)に今は城八幡宮があり阿弥陀如来が祀られている」ーー興味深い記述である。佐河四郎左衛門のことは平尾賞受賞者・原田英祐氏から教えてもらったことがあって、頭の片隅にあった。信頼度の高い『佐伯文書』にも見える名前であり、東の安芸郡安田町(および田野町)と西の高岡郡佐川町を結びつけるキーパーソンなのだ。
 高岡郡佐川町庄田の鯨坂八幡宮には「本宮に品陀別命(応神天皇)を祀り、左右二社に息長帯日売命(神功后皇) 高良玉多礼日子命(竹内宿禰)の三神を祀り」と『土佐太平記』(明神健太郎著)に書かれ、安芸郡からの勧請と伝えられている。
 この三柱を祀る祭神形態は、③安田町東島の城八幡宮および④田野町淌涛の田野八幡宮の祭神形態とほぼ同じなのである。城八幡宮には「阿弥陀如来が祀られている」と案内板に書かれていることは事実かもしれないが、おそらく神仏習合の名残りなのだろう。安芸郡においては阿弥陀如来が祀られている八幡宮がいくつかある。文献等を調べると、③④は八幡宮の祭神「応神天皇・神功皇后・高良玉垂命」の三柱として祀られている。大分県の宇佐神宮における比売大神が高良玉垂命に置き替わった形態である。
 さらに、②安田八幡宮境内摂社・若宮神社の祭神が「仁徳天皇・気長帯姫命(神功皇后)・高良玉垂命」となっている点が注目される。古代において、安田川河口にはラグーンがあって天然の良港であったと推定されている。この安田川を中心とする安芸郡安田町・田野町に高良玉垂命を祀るトライアングルが形成されていたのだ。
 前置きが長くなってしまったが、西側から城八幡宮への登り口を見つけて徒歩で登っていく。竹林に覆われた城山を安田城の最上段(詰の段)まで進んでいった。少し開けたところに神社が祀られ、詳細な案内板もある。「城様」という看板が気になったが、どうやら地名のようである。なぜこのような場所に高良玉垂命が祀られているのか? 山の麓の大木戸古墳に何かヒントがあるように感じた。
 6~7世紀の古墳としては高知県東部では珍しいものである。昭和29年赤土採取中に発見され、三基とも横穴式で中から須恵器などを発見し、町文化センター内に保管している。
 なお室町時代に安田氏が建てた板碑や経筒は、現在県立歴史民俗資料館に飾られている。(現地の案内板より)

 大木戸古墳群(安芸郡安田町東島大木戸)は『土佐の須恵器』(廣田典夫著、1991年)によると「高知県内では最も東に位置する古墳群」とされている。しかも、「横穴式石室古墳で3基」もあるのだ。お隣の安芸市が銅矛出土の東限という情報と組み合わせても、九州王朝勢力の安芸郡への進出が読み取れる。「高良神社の分布と横穴式石室古墳の分布が一致する」という指摘は、ここでも完全に成立しているようである。これには『ポケット・モンスター』の大木戸博士も、ダジャレの一つ出ないだろう。
 倭国・九州王朝との関係性が見い出された「2018年秋の安芸郡調査」から2年半、「2021年春一番の安芸調査」でその根拠はさらに深まることになった。

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 大学時代に『「邪馬台国」はなかった』(古田武彦著)を読んで、夜寝られなくなりました。古代史に関心を持つようになったきっかけです。
 算数・数学・理科・社会・国語・英語など、オールラウンドの指導経験あり。郷土史やルーツ探しなど研究を続けながら、信頼できる歴史像を探究しているところです。
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