『愛媛の地名』の著者・堀内統義氏はナロ・ナル地名について「東北の平(たい)、九州の原(はる)、四国の平(なる)と同じ地名の群落。奈良も千葉県の習志野も、ナラス、ナラシの当字で、平らな原野を表現している」と書かれている。 高知県でも奈路は「山の平坦な所」を意味するという。「宮ノ奈路」という地名もあり「宮ノ原」と類縁地名なのかもしれない。県西部の四万十町大正大奈路字宮原は内陸部にあって、やや開けた場所となっている。高岡郡四万十町の大正大奈路を紹介したパンフレットに次のような記述がある。 「中心街には、下道分校や中津川・下津井各小学校が統合された大奈路小学校があり地域の核になっている。学校の裏の小さな中洲のようなところには天満宮があり、大切に祀られている」 この旧村社・天満宮(祭神:菅公)の鎮座地が大正大奈路字宮原である。八幡宮、諏訪神社、大倉神社、地主神社、大元神社を合祭していることから、地域の中核的な神社と言えるだろう。 旧大正町において大奈路は北部地域の中心地であった。天満宮に隣接する大奈路小学校については学制発布と同年の明治五年に開設した歴史の深い学校であり、平成八年には休校になった中津川小学校を統合、平成九年にも下津井小学校を統合したが、残念ながら平成二十五年に閉校(田野々小学校に統合)となっている。 これまで調べた県内の宮原地名と同様、ここでも「宮原」は宗教的な中心地であると同時に、文教の中心でもあったことが分かる。
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