「古代に真実を求めて」シリーズの古田史学論集第二十四集が今春、ついに明石書店から出版された。タイトルは『俾弥呼と邪馬壹国―古田武彦『「邪馬台国」はなかった』発刊五十周年』(古田史学の会 編、2021/03/30)である。
題名にはルビを振ってあり、『俾弥呼(ひみか)と邪馬壹国(やまゐこく)』と素人でも分かるようにしてくれている。それでも、身近な大学生に見せたところ、しっかり「ひみことやまたいこく」と読んでいた。義務教育で使用される歴史教科書の影響は絶大である。 邪馬台国論争における古田武彦説を知らない一般人がこの本のタイトルを見たら、まず「漢字を間違えているのではないか」「読み方が異なっている」などの第一印象を受けることだろう。学校で習った教科書には「卑弥呼(ひみこ)」「邪馬台国(やまたいこく)」と書かれていたはずである。 それでもあえてこのようなタイトルにしているのは、そこに古田史学の研究の成果・蓄積があるからである。『俾弥呼(ひみか)と邪馬壹国(やまゐこく)』という題名にこそ古田説の本質が集約されている。ここでは詳細には踏み込まないので、古田武彦氏の初期三部作(『「邪馬台国」はなかった』『失われた九州王朝』『盗まれた神話』)などをはじめとする著作やホームページ『新・古代学の扉』などで勉強してほしい。当ブログでも古田説のポイントをいろいろな形で紹介してきたつもりである。 また今回発刊された古田史学論集第二十四集が古田説を世に知らしめるツールとなればと願うものである。その内容を紹介する上で、本の内容説明および目次を以下に引用しておく。 <内容説明> 古代史界に衝撃を与えた古田武彦『「邪馬台国」はなかった』の刊行から50年。その歴史観、学問方法論を受け継ぐ執筆陣による「邪馬壹国説」「短里説」「博多湾岸説」「二倍年暦説」「倭人が太平洋を渡った説」などの諸仮説をめぐる最新の研究成果を集める。 <目次> 巻頭言 読者の運命が変わる瞬間[古賀達也] 『「邪馬台国」はなかった』のすすめ[古賀達也] 特集俾弥呼(ひみか)と邪馬壹国(やまゐこく)―古田武彦『「邪馬台国」はなかった』発刊五十周年― 【総括】 魏志倭人伝の画期的解読の衝撃とその余波―『「邪馬台国」はなかった』に対する五十年間の応答をめぐって―[谷本茂] 改めて確認された「博多湾岸邪馬壹国」[正木裕] コラム① 古田武彦氏『海賦』読解の衝撃 コラム② 日本の歴史の怖い話 【各論】 周王朝から邪馬壹国そして現代へ[正木裕] 女王国論[野田利郎] 東鯷人・投馬国・狗奴国の位置の再検討[谷本茂] 「女王国より以北」の論理[野田利郎] コラム③ 長沙走馬楼呉簡の研究―「都市」は官職名― コラム④ 不彌国の所在地を考察する―弥生の硯出土の論理性― メガーズ説と縄文土器―海を渡る人類[大原重雄] コラム⑤ バルディビア土器はどこから伝播したか―ベティー・J・メガーズ博士の想い出― 裸国・黒歯国の伝承は失われたのか?―侏儒国と少彦名と補陀落渡海―[別役政光] 二倍年暦と「二倍年齢」の歴史学―周代の百歳と漢代の五十歳―[古賀達也] 箸墓古墳の本当の姿について[大原重雄] コラム⑥ 箸墓古墳出土物の炭素14測定値の恣意的解釈 コラム⑦ 曹操墓と日田市から出土した金銀象嵌鏡 特別寄稿 『日本書紀』推古・舒明紀の遣隋使・遣唐使―天群と地群―[谷川清隆] 一般論文 「防」無き所に「防人」無し―「防人」は「さきもり(辺境防備の兵)」にあらず―[山田春廣] 太宰府条坊の存在はそこが都だったことを証明する[服部静尚] 古代の疫病と倭国(九州王朝)の対外戦争―天然痘は多利思北孤の全国統治をもたらした―[正木裕] 九州王朝官道の終着点―山道と海道の論理―[古賀達也] 『書紀』中国人述作説を検証する―雄略紀および孝徳紀の倭習―[服部静尚] コラム⑧ 関東の木花開耶姫(このはなさくやひめ) 付録古田史学の会・会則 古田史学の会・全国世話人名簿 編集後記 PR |
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