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 平凡社『高知県の地名』に次のような記述がある。室戸岬に近い金剛頂寺の寺領として「宮原庄」が登場している。


 正安四年(一三〇二)一〇月に神供田の実検が行われ、当時の寺領として「島田庄・浮津庄・大田庄・池谷庄・宮原庄・安田庄」などの名が見える。いずれも浮津から北西の安田に及ぶ海岸の地と思われ、前述の寺記に「応永の比(ころ)迄ハ三千五百石浮津ヨリ海辺安田迄」とあるのは石高は別にしてもある程度裏付けられる。

 私の知るところでは、高知県の「宮原」地名としては一番古いものではないかと思われる。安芸郡内の浮津から北西の安田に及ぶ海岸の地と推測される。香南市夜須町に「宮ノ原」があることは紹介したが、そこは郡境を隔てており、異なる場所と考えるべきだろう。
 この宮原庄がどこにあったのか。橘氏との関連があるのか、といったことが今後の研究テーマとなってくる。
 ブログ「宮原誠一の神社見聞牒」で、九州各地の神社調査を行なっている宮原誠一氏は橘一族の後裔であり、「宮原」地名について次のように述べている。

 宮本の名称は、大善寺玉垂宮のある地名、大善寺町大字宮本から来ているのです。また、宮原の名称も宮本から来ているのです。
 「源」の「みなもと」は 氵+ 原 → 水原(みなもと) から採られるように、「宮原」の「原」は「もと」という意味なのです。「みやもと」は神社を司る一族ともいえます。

 地名「宮原」は「みやもと」に通じ、「宮ノ原」もまたしかりである。そうすると宮原家も神社を司る一族なのかもしれない。高知県には橘家神道も一部入ってきていると思われるので、そちらとの関連についても調べてみたいところである。

 『長宗我部地検帳』でホノギ(小字)「宮ノ原」をピックアップすると、よく「惣佾(そうのいち)給」などと出てくる。「佾」というのは神に仕える巫女のような人で、その中心的立場の人物が「惣佾」である。これは男性の場合もある。土佐市に以前は「宮ノ原村」があり、やはり惣佾が住んでいたが、退転したとの記録があり、「宮ノ原」地名も失われてしまったようである。その場所の特定も課題である。
 最後に、「四国八十八ヶ所霊場会」のホームページより、26番札所「金剛頂寺」に関する情報を紹介しておこう。

金剛頂寺の歴史・由来

 室戸岬から海岸沿いに西北に向かうと、土佐湾につき出した小さな岬がある。硯が産出するので硯が浦ともいわれる「行当岬」である。その岬の頂上、原始林の椎に覆われて静寂さがただよう境内が金剛頂寺であり、室戸三山の一寺院として「西寺」の通称でも親しまれている。朱印も「西寺」と捺される。当寺から4kmのところに女人堂と呼ばれる不動堂がある。若き弘法大師はこの間を毎日行き来し修行した霊地であり、行道したことから、「行当」はその名残かもしれない。縁起によると、大師が平城天皇(在位806〜9)の勅願により、本尊の薬師如来像を彫造して寺を創建したのは大同2年と伝えられている。創建のころは「金剛定寺」といわれ、女人禁制とされて、婦女子は行当岬の不動堂から遙拝していたという。
 次の嵯峨天皇(在位809〜23)が「金剛頂寺」とした勅額を奉納されたことから、現在の寺名に改め、さらに次の淳和天皇(在位823〜33)も勅願所として尊信し、住職は第十世まで勅命によって選ばれており、以後、16世のころまで全盛を誇った。
 室町時代に堂宇を罹災したこともあったが復興ははやく、長宗我部元親の寺領寄進や、江戸時代には土佐藩主の祈願所として諸堂が整備されている。昭和になって注目されるのは正倉院様式の宝物殿「霊宝殿」の建立である。平安時代に大師が各地を旅したときの「金銅旅壇具」は、わが国唯一の遺品であり、重要文化財が数多く収蔵されている。

金剛頂寺の見どころ

霊宝殿

収蔵する木造阿弥陀如来坐像、板彫真言八祖像、銅造観音菩薩立像、金銅密教法具、金銅旅壇具、銅鐘、金剛頂経などはすべて国指定重要文化財。

奴草

境内に自生する天然記念物。

鯨供養塔

鯨の供養塔があり、別名「クジラ寺」ともいわれる。

一粒万倍の釜

大師が炊いた米が一万倍に増え、人々を飢えから救ったという。



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 大学時代に『「邪馬台国」はなかった』(古田武彦著)を読んで、夜寝られなくなりました。古代史に関心を持つようになったきっかけです。
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