「古代に真実を求めて」シリーズの最新刊が6月、明石書店から発刊された。タイトルは古田史学論集第二十六集『九州王朝の興亡』(古田史学会編、2023年)だ。執筆陣が関西に片寄っていることは近年の傾向であるが、大和朝廷に先立つ九州王朝ありきの多元史観を知ることのできる1冊である。 天孫降臨から大和朝廷への王朝交替までを綿密かつ簡潔に綴った「倭国(九州王朝)略史」。古代中国史料批判の新視点を提起する 「古代日中交流史研究と『多元史観』」など、古田学派の九州王朝研究の到達点を示す論集となっている。 個人的には満田正賢氏の「『群書類従』に収録された古代逸年号に関する考察」に興味を持った。古代逸年号史料にも大きくは2つの系列があることを分類整理しているからだ。現在、調査中の九州年号史料を研究する上で、大いに参考になりそうだ。 特集は「九州王朝の興亡」。大和朝廷以前の日本の代表王朝「倭国」は九州王朝と唱えた古田武彦氏の九州王朝説を受け継ぎ、研鑽を重ねてアップグレードさせた最新の研究精華を収録する。「倭国(九州王朝)略史」「古代日中交流史研究と『多元史観』」など。 ◆目次 はじめに 巻頭言 覚悟を決めた第二著『失われた九州王朝』[古田史学の会代表 古賀達也] 特集 九州王朝の興亡 倭国(九州王朝)略史[正木裕] 古代日中交流史研究と「多元史観」―五世紀〜七世紀の東アジア国際交流史の基本問題―[谷本茂] 九州年号の証明―白鳳は白雉の美称にあらず―[服部静尚] 『群書類従』に収録された古代逸年号に関する考察[満田正賢] 倭国律令以前の税体制の一考察[服部静尚] 多利思北孤の「東方遷居」[正木裕] 太宰府出土須恵器杯Bと律令官制―九州王朝史と須恵器の進化―[古賀達也] 「壬申の乱」の本質と、「二つの東国」[正木裕] 柿本人麿が詠った両京制―大王の遠の朝庭と難波京―[古賀達也] 『後漢書』「倭國之極南界也」の再検討[谷本茂] 「多賀城碑」の解読―それは「道標」だった―[正木裕] 七世紀の須恵器・瓦編年についての提起[服部静尚] コラム① 蹴鞠ではなく打毬用の木球 コラム② 年縞博物館と丹後王国 PR |
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