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 四国をメイン舞台とする歴史小説『非時香菓-斉明天皇・天智天皇伝説-』が発刊された。読んでる途中の知人も「松山じゃなくて西条の方なんですね」と感想を語ってくれた。
 「熟田津(にぎたつ)」の比定地1つ取っても、地元の伝承を数多く拾い上げた多元的歴史観によるこの小説は、通説とは一味違う。そしてネタバレになりそうだが、斉明天皇が土佐国へ向かうストーリー展開は従来説に一石を投じそうだ。
 斉明天皇の朝倉橘廣庭宮は通説では福岡県朝倉市に比定されているが、伊予朝倉説、土佐朝倉説などもあって、考古学的出土物や伝承の有無など総合的な根拠によって論じられなければならない。土佐朝倉説については『南路志』などにも記録があるところだが、愛媛県側の史料にも斉明天皇や天智天皇の土佐国下向について記述されているという。
 また、愛媛県に「紫宸殿」地名があり、高知県には「内裏」地名が存在する。そして高知県最古の古代寺院跡である秦泉寺廃寺近くに天智天皇のミササギ(御陵)とされる伝承も残されており、熊野十二社神社に現存する「斎明六年(660年)棟札」のことも、しっかり小説に取り込まれている。
 そして小説のタイトルにもなった「非時香菓(ときじくのかくのみ)」。牧野富太郎博士は否定しているが、一般的には橘とされており、その原生林が土佐市松尾山に残されている。単なる空想小説でなく、古代史を紐解く上で多くの示唆が与えられる内容となっている。

郁朋社 ikuhousha
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『非時香菓(ときじくのかくのみ)-斉明天皇・天智天皇伝説-』(白石恭子著)
 倭国朝廷から大和朝廷へ、歴史は大きく舵を切った。 無量寺縁起(由来旧記)によれば、寺は白鳳時代に開創。斉明天皇が下向時に朝倉に三カ月逗留したという。愛媛・今治に伝わる古代伝承から新たに歴史を紐解いた意欲作。読めば『日本書紀』の真の意味がよく分かる。
並製・152頁・1,100円(税込)
Amazonをはじめとするネット書店・全国の書店にてご注文可能です。


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自己紹介:
 大学時代に『「邪馬台国」はなかった』(古田武彦著)を読んで、夜寝られなくなりました。古代史に関心を持つようになったきっかけです。
 算数・数学・理科・社会・国語・英語など、オールラウンドの指導経験あり。郷土史やルーツ探しなど研究を続けながら、信頼できる歴史像を探究しているところです。
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