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天満宮ノ宝刀

神息ノ刀   土佐国土佐郡潮江村天満宮御宝刀表ニ神息裏二朱鳥平身作り中直刀少々のたれ有   匂ひ深シ明治廿六年二月廿三日祠官宮地堅磐方ニ於テ謹拝見ス 松野尾章行(『皆山集①』P358)
 潮江天満宮の宝刀には表に「神息」、裏に「朱鳥」の銘がある。書かれていることは本当だろうか。それとも後代の偽作なのだろうか。手掛かりを探すために、再度『皆山集①』に目を通してみた。冒頭の記述に続けて、次のような説明が書かれている。
装剣備考ニ云 万宝全書銘盡ニ神息上元明天皇御宇和銅の比豊前国宇佐宮社僧と云々鍛冶備考ニハ大同中と云「大同ハ平城天皇の御宇なり」又豊後国高田に文明比戯れに二字銘打しありと古刀銘集録に見ゆ
 ここには『装剣備考』『古刀銘集録』など、江戸期の文献が見える。簡単に要約すると、『万宝全書銘盡』に「神息」というのは和銅年間(708〜715年)頃の豊前国宇佐八幡宮の社僧だといい、『鍛冶備考』には大同年間(806〜810年)頃の刀工とある。豊後高田に文明年間(1469〜1487年)頃、戯れに「神息」の二字を銘打したものがあると『古刀銘集録』に見える。
 「ああ、やっぱり戦国時代頃に伝説上の刀工を模して偽造された物だったのか」と落胆されたかもしれない。しかし、即断するのは待ってほしい。

▲アニメ『刀剣乱舞-花丸-』より

 シュミレーションゲーム『刀剣乱舞』の流行により、世はまさに刀剣ブーム到来を告げ、「刀剣女子」という流行語まで生み出した。刀剣を展示するイベントも様々な場所で開催された。また、失われた名刀を復活させる事業にも多くの寄付金が寄せられたという。
 潮江天満宮の宝刀は「平身作り中直刀」とある。実物を専門家に鑑定してもらうのが一番だが、現存しているかどうか、定かではない。
 だが、一般的に知られていることはある。「平身作り」というのは、平面で鎬(しのぎ)筋のない平造りのことだろうか。「直刀」とは、刀身に反りのない真っ直ぐな形のもので、平安時代中期以前のものはこの形となり、それ以降の刀身には鎬があり反りをもった形状になる。

▲国宝「金銅荘環頭大刀」レプリカ

 そうなると、朱鳥二年(687年)という年代に合致する。『皆山集①』の記述によると、潮江天満宮の宝刀は、古墳時代から平安初期にかけて造られていた刀剣と同じ形式だったのである。


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 大学時代に『「邪馬台国」はなかった』(古田武彦著)を読んで、夜寝られなくなりました。古代史に関心を持つようになったきっかけです。
 算数・数学・理科・社会・国語・英語など、オールラウンドの指導経験あり。郷土史やルーツ探しなど研究を続けながら、信頼できる歴史像を探究しているところです。
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