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 高岡郡日高村といえば「日高見国」を連想する人もいるだろう。日高見国とは古代日本において、大和または蝦夷の地を美化して用いた語とされる。『大祓詞』では「大倭日高見国」として大和を指すが、『日本書紀』景行紀や『常陸国風土記』では蝦夷の地を指し大和から見た東方の辺境の地域のこと。
 しかしながら、地名研究においては対象とする地名がいつ始まったかということを確認する必要がある。結論から言うと、日高村という村名は「日本」と「高知県」から1文字ずつ取ったことに由来する。したがって日高村と「日高見国」を結びつけることは不可能であり、地名が似ているだけでは地名由来の根拠とならないことは理解できるだろう。他にも、越智国造の小知命(小千命/乎致命)の墓が愛媛県今治市の「日高」に伝わること等から、この小知命と結びつける説もあるようだが、高知県高岡郡の日高村は古代に遡れない地名であるから、これも成立しないことになる。
 1954年(昭和29年)、日下村・能津村および加茂村の一部(大字岩目地・九頭)が合併して日高村が発足。能津村といえば、映画『竜とそばかすの姫』で思い出の小学校として登場した能津小学校のある場所だ。映画では「謎の竜」の正体探し(アンベイル)が一つのテーマとなっているのだが、実は日高村に竜をかたどった国宝の大刀が隠されている。それが小村(おむら)神社の御正体(御神体)であり、竜の模様(双竜銜玉)の環頭を持つ金銅荘環頭大刀拵・大刀身(古墳時代・7世紀前半)だ。

 『映画「竜とそばかすの姫」舞台のモデル公式ガイドMAP』に掲載されている13のスポットには入っていないが、隠れスポット①として小村神社を推したい。棟札の記録によると、小村神社は勝照二年(586年)の創建。『土佐幽考』(安養寺禾麿著)では、『新撰姓氏録』に見える高岳首・日下部と高岡郡日下庄とを関連づけ、その共通の祖神として国常立命を祀り大刀を御神体としたとする。
 御神体の大刀については『刀剣乱舞』のキャラクター候補にもなったようだが、年に一度11月15日の秋の大祭の時に一般公開されるのみで、制作会社からの申し出は丁重にお断りされたようである。ただし、高知県立歴史民俗資料館の特別展「驚異と怪異―世界の幻獣と霊獣たち」では本物が展示されていた。
 それでは、どこに行けば竜に会えるのか。日高村オムライス街道にある「村の駅ひだか」――観光情報発信コーナーでは、観光案内所を併設するとともに、国宝の「金銅荘環頭大刀」のレプリカを展示公開している。直接目にして、環頭の模様に隠された竜を見つけ出してほしい。
 国道33号線沿いには日高村特産のシュガートマトを使用したオムライスの店が建ち並ぶ。なぜオムライス街道と呼ばれるようになったのかというと、名前の由来はオムライス……だけではなくて「小村神社」にかけた命名なのだという。映画のタイトル『竜とそばかすの姫』をもじった竜田そば天かす入り」みたいなメニュー開発にも期待する。
 日高村の中心は旧日下(くさか)村であり、漫画家のくさか里樹さんや江戸時代の義賊・日下茂平(茂兵衛)は地元出身の有名人である。間違っても声優の日髙のり子さんとは直接関係なさそうだ。

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 大学時代に『「邪馬台国」はなかった』(古田武彦著)を読んで、夜寝られなくなりました。古代史に関心を持つようになったきっかけです。
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