歴史上「九州年号」と呼ばれる古代の年号群がある。6世紀前半から8世紀初頭にかけて作られたもので,主に神社や寺の縁起などに登場する。
干支で並べると隙間なく並べることができるので,統一権力による年号と考えるのが正当な評価だと思う。(明治以降,私年号や偽年号といった差別的な扱いを受けたが,江戸時代にはそうではなかったとのこと。どちらが学問的か)
古代史研究というと,何か難しいことのように思えるが,この九州年号が寺社縁起に登場するかどうか探すという方法で,古代史研究を楽しむというやり方もあると思う。縁起はたいていその寺社がいかに長い歴史を持つのかという観点で書かれているので,その冒頭に九州年号が使われることがあるのだ。
「続日本紀」によると,701年には大宝年号が建元される。つまり大和年号(近畿天皇家の作った年号)がここでスタートしたのだ。聖武天皇も詔勅の中で,「白鳳以来,朱雀以前」という形で,九州年号の存在を語ってくれている。
だから,それ以前に建てられた寺社は,
九州年号を使っている可能性が高いか,
または「日本書紀」の影響で書き換えられた。いずれにしても,「九州年号を探そう!」という観点は,古代史入門にとってもいいきっかけを作ってくれると思う。
最後に,「九州年号の一覧」をどうぞ!
継体・・・517~521年(5年間)
善記・・・522~525年(4年間)
正和・・・526~530年(5年間)
教到・・・531~535年(5年間)
僧聴・・・536~541年(5年間)
明要・・・541~551年(11年間)
貴楽・・・552~553年(2年間)
法清・・・554~557年(4年間)
兄弟・・・558年(1年間)
蔵和・・・559~563年(5年間)
師安・・・564年(1年間)
和僧・・・565~569年(5年間)
金光・・・570~575年(6年間)
賢接・・・576~580年(5年間)
鏡当・・・581~584年(4年間)
勝照・・・585~588年(4年間)
端政・・・589~593年(5年間)
告貴・・・594~600年(7年間)
願転・・・601~604年(4年間)
光元・・・605~610年(6年間)
定居・・・611~617年(7年間)
倭京・・・618~622年(5年間)
仁王・・・623~634年(12年間)
僧要・・・635~639年(5年間)
命長・・・640~646年(7年間)
常色・・・647~651年(5年間)
白雉・・・652~660年(9年間)◆
白鳳・・・661~683年(23年間)
朱雀・・・684~685年(2年間)
朱鳥・・・686~694年(9年間)◆
大化・・・695~703年(9年間)◆
大長・・・704~712年(9年間)
日本書紀によると,年号は大化(645)から始まり,飛び石的に白雉や朱鳥があり,大宝(701)につながるというのだがおよそ年号というものは「すき間なく続いている」ことに意義があるのであり,それでこそ年代のモノサシ足りうるのだ。その点,日本書紀に出てくる3つの年号はそもそも「年号」としてのテイをなしていないのである。
なお,712年という年号は「古事記」の作られた年だ。大和中心の歴史がまとめられた年に九州年号も終わる。