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 「学問は実証より論証を重んじる」との話は授業でも紹介したことがあったが、説明しながらしっくり来ない部分もあった。通常は机上の空論よりは実証のほうが重みがあるのではないかと考える。「論より証拠」ということわざがあるくらいだ。
 ところが最近、この言葉の真意が明らかになってきた。「『日本書紀』に書いてあるから史実である」といった誤った実証主義に対するアンチテーゼだったのである。

 「教科書に書いてあるから正しい」という理屈はセンター試験の正誤問題をはじめ、多くのテストにおいて基準になる。教育の現場において教科書を尊重する姿勢は大切である。その一方で、例えば「対頂角は等しい」という命題は教科書に書いてあるから正しいのではなく、証明によって示すことができるから正しいというのが本質であり、学問的である。もちろん、毎回証明していては煩雑であり、学問の発展にもブレーキとなる。多くの専門家が監修し、長年蓄積してきた叡智の結実として信頼性の高い教科書だからこそ、そこに書いてあることは正しいと言うことは差し支えないのである。厳密に言うと、それぞれの学年、教育段階に合わせた方便が用いられていることはやむを得ないことであろう。
 一方、『古事記』や『日本書紀』は教科書たり得るだろうか? 資料批判することによって書かれた背景や思想性、信頼度などを十分に検証する必要がある。それらを抜きにして「そこに書かれているから正しい」といった態度は真の実証主義とは言い難い。誰もが納得し得る根拠を示す必要があるのだ。やはり「学問は実証より論証を重んじる」のである。



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 大学時代に『「邪馬台国」はなかった』(古田武彦著)を読んで、夜寝られなくなりました。古代史に関心を持つようになったきっかけです。
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