高知市朝倉の西に隣接する“土佐和紙”のメッカ吾川郡いの町。ここには古代官道の駅家(うまや)の存在をにおわせる「馬ヤノシリ」地名がある。アニメ映画『竜とそばかすの姫』の舞台として有名になったJR伊野駅の南西、早稲川西岸で伊野中学校の近くの場所だ。
岡本健児氏が「地検帳から見た土佐の郡衙」(『土佐史談159号』土佐史談会、昭和57年5月)の中で、吾川郡の郡家を伊野町(現いの町)に比定したのは『長宗我部地検帳』に見える「大リャウ(大領)」などの地名が根拠になっている。それを補足すべく、伊野村地籍図で「厩ノ尻」を確認した後、「大領は県立伊野商業高校北の小高い場所にあり、厩ノ尻は町立伊野中学校の近くである」と結んでいる。
「〇〇ノ尻」は〇〇跡を意味すると考えられ、「厩ノ尻」は「厩(うまや)跡」ないしは「駅家(うまや)跡」を示す地名遺称として、高知県下に数か所存在している。それが中世のものか、古代まで遡れるかについては慎重に議論すべきところだが、郡家比定地とセットで存在するケースがいくつか見られる。
▲おおよそ上が東、左が北 |
南海道の土佐国府に通じる古代官道に関しては、718年以降は阿波国経由。それ以前は伊予国経由であったと考えられている。古い段階の伊予国経由の官道がどこを通っていたかについては、いくつかの説があって、いの町に吾川郡家があり、「厩ノ尻」が古代官道の30里(約16km)ごとに配置された駅家跡であったとすれば、ルートを推定する上で重要な定点となる。
この経路が有力な点は、土佐神社(一宮)――朝倉神社(二宮)――小村神社(二宮;三宮とする説あり)という歴史ある延喜式内社および国史現在社を経る東西線上にあって、現在もJRや国道33号線が通る比較的直線的な交通路であることだ。小村神社の創建については「勝照二年(587年)」という九州年号で記録されている点は、これまで言及してきた通りである。
その一方で、古代寺院である大寺廃寺(春野町西分)や野田廃寺(土佐市高岡町丙)はそれよりも南方にある。ともに素弁蓮華文軒丸瓦が出土した7世紀に遡りうる寺院である。他県の事例でも、古代寺院は古代官道付近に建立されることが多く、大寺廃寺跡のさらに南方、春野町秋山に吾川郡家を比定する説も出されている。先の岡本氏自身も大寺廃寺跡付近に郡衙関連施設が発掘される可能性について言及している。
これらを状況証拠とするならば、高知市春野町(旧吾川郡)――土佐市を経由する南方ルートの可能性も見えてくる。四国八十八か所遍路道が春野町や土佐市を通っていることも、その有力な根拠と考えられる。すなわち古代官道の多くは、後の四国八十八か所遍路道に引き継がれていったという指摘である。
718年以前の伊予国経由の古代官道がどのようなルートを通っていたか。今後、発掘調査等で明らかになることが期待されるところだが、高知県における‘古代史の争点’の一つである。
この経路が有力な点は、土佐神社(一宮)――朝倉神社(二宮)――小村神社(二宮;三宮とする説あり)という歴史ある延喜式内社および国史現在社を経る東西線上にあって、現在もJRや国道33号線が通る比較的直線的な交通路であることだ。小村神社の創建については「勝照二年(587年)」という九州年号で記録されている点は、これまで言及してきた通りである。
その一方で、古代寺院である大寺廃寺(春野町西分)や野田廃寺(土佐市高岡町丙)はそれよりも南方にある。ともに素弁蓮華文軒丸瓦が出土した7世紀に遡りうる寺院である。他県の事例でも、古代寺院は古代官道付近に建立されることが多く、大寺廃寺跡のさらに南方、春野町秋山に吾川郡家を比定する説も出されている。先の岡本氏自身も大寺廃寺跡付近に郡衙関連施設が発掘される可能性について言及している。
これらを状況証拠とするならば、高知市春野町(旧吾川郡)――土佐市を経由する南方ルートの可能性も見えてくる。四国八十八か所遍路道が春野町や土佐市を通っていることも、その有力な根拠と考えられる。すなわち古代官道の多くは、後の四国八十八か所遍路道に引き継がれていったという指摘である。
718年以前の伊予国経由の古代官道がどのようなルートを通っていたか。今後、発掘調査等で明らかになることが期待されるところだが、高知県における‘古代史の争点’の一つである。
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HN:
朱儒国民
性別:
非公開
職業:
塾講師
趣味:
将棋、囲碁
自己紹介:
大学時代に『「邪馬台国」はなかった』(古田武彦著)を読んで、夜寝られなくなりました。古代史に関心を持つようになったきっかけです。
算数・数学・理科・社会・国語・英語など、オールラウンドの指導経験あり。郷土史やルーツ探しなど研究を続けながら、信頼できる歴史像を探究しているところです。
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