南国市国分の土佐国分寺跡から素弁の古瓦が出土していることから、国分僧寺に先行する白鳳寺院が存在していた可能性が浮かび上がってきた。「土佐国分寺は先行寺院から転用された」とする説は稲垣晋也氏や山本哲也氏など、複数の専門家も言及している。けれども慎重に検討すべき問題点もあることを指摘しておきたい。
そもそも“多元的「国分寺」研究サークル”で「土佐国分寺に素弁あり」と判断した発端は『土佐史談65号』(土佐史談会、昭和13年12月)であった。何事も出典に当たることは大切なことで、『土佐史談』のバックナンバーを探し、田所眉東氏の論考「土佐國分寺瓦に就て」の中に拓影があるのを確認した。
近年の土佐国分寺の発掘調査が始まるのが1970年代であり、80年代から継続的な調査が本格化する。田所眉東氏が目にした瓦や拓本は、それ以前の昭和12年時点で土佐国分寺周辺や長岡郡国府小学校などに所蔵されていたものであり、正確な出土地点は不明瞭なものが多いこと。とりわけ田所氏が「国府小学校所蔵蓮弁古瓦は畿内地方なれば飛鳥時代のものと見られるが、流布の時間を考へても白鳳時代のものとなる」と考察している古瓦については、国府小学校校長の話によると、紀貫之が住んだとされる(国司庁址)より出土したとのこと。いわゆる「タイリ(内裏か)」地名が残る場所である。
『高知県史』掲載の図に「土佐国分寺及び国府址出土古瓦」と書かれているのはこのような理由からである。また、山本哲也氏も「国分寺蔵瓦類のなかには同寺出土以外の瓦類が一部含まれている」(「土佐国分寺跡の再検討」『南海史学32号』1994年)と註釈している。
そもそも“多元的「国分寺」研究サークル”で「土佐国分寺に素弁あり」と判断した発端は『土佐史談65号』(土佐史談会、昭和13年12月)であった。何事も出典に当たることは大切なことで、『土佐史談』のバックナンバーを探し、田所眉東氏の論考「土佐國分寺瓦に就て」の中に拓影があるのを確認した。
近年の土佐国分寺の発掘調査が始まるのが1970年代であり、80年代から継続的な調査が本格化する。田所眉東氏が目にした瓦や拓本は、それ以前の昭和12年時点で土佐国分寺周辺や長岡郡国府小学校などに所蔵されていたものであり、正確な出土地点は不明瞭なものが多いこと。とりわけ田所氏が「国府小学校所蔵蓮弁古瓦は畿内地方なれば飛鳥時代のものと見られるが、流布の時間を考へても白鳳時代のものとなる」と考察している古瓦については、国府小学校校長の話によると、紀貫之が住んだとされる(国司庁址)より出土したとのこと。いわゆる「タイリ(内裏か)」地名が残る場所である。
▲国府小学校所蔵の連弁古瓦拓本 |
『高知県史』掲載の図に「土佐国分寺及び国府址出土古瓦」と書かれているのはこのような理由からである。また、山本哲也氏も「国分寺蔵瓦類のなかには同寺出土以外の瓦類が一部含まれている」(「土佐国分寺跡の再検討」『南海史学32号』1994年)と註釈している。
土佐国分僧寺の古瓦を見れば白鳳式の奈良前期のものがある。阿波は畿内に近けれども未だ斯くの如きものを発見せぬ之には驚いたのである、国府小学校所蔵の蓮弁古瓦を見ては実に驚愕して居る。万一にも此瓦当を畿内地方で見せられたれば飛鳥時代のものと云わなければならんが、土佐なれば其流布の時間を考へなければならんから、先ず白鳳時代と見た。されば国分僧寺より先に此辺に寺院が早やあったと云へる。校長殿の言として紀氏邸址方面(国司庁址)より出土したというがこれは寺院関係のものである、只今の所比江方面に斯の如き蓮弁古瓦の出土候補地は他に見出せぬ。比江塔址の心柱礎石の加工状態は国分僧寺のそれに似たるも、雄大さは比江の方が大いに優れて居る、之れを以て古代寺院代用説を採る所以である。(田所眉東「土佐國府址」『土佐史談62号』昭和13年3月)
この文書には徳島県の田所氏の驚きがよく表現されている。近畿天皇家一元史観に立てば、畿内に近い徳島県のほうが時代的に古くなければならないが、瓦の形式から言えば高知県のほうがずっと古いというのだ。また田所氏は、四国においてはまず伊予国に古代寺院が建立され、土佐国の古代寺院は伊予国小松町北川の法安寺の影響であろうとまで考察している。すなわち、東からの伝播ではなく、西からの伝播を示唆しているのである。
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塾講師
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自己紹介:
大学時代に『「邪馬台国」はなかった』(古田武彦著)を読んで、夜寝られなくなりました。古代史に関心を持つようになったきっかけです。
算数・数学・理科・社会・国語・英語など、オールラウンドの指導経験あり。郷土史やルーツ探しなど研究を続けながら、信頼できる歴史像を探究しているところです。
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