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 「仁淀ブルー」の異名で知られる“奇跡の清流”仁淀川。その西岸(右岸)をドライブしていると、何やら見たことのある光景が飛び込んできた。もしかして能津(のうづ)小学校だろうか? まだ見ぬ映画『竜とそばかすの姫』では、廃校を使った集落活動センターのモデルとなった小学校である。
 実際は17名ほどの生徒がおり、現在も開校している。能津第一小学校、能津第二小学校、鴨地小学校の3校が、校舎設備の老朽化と過疎化による児童数減の問題により、昭和50年度に統合されて日高村立能津小学校(高知県高岡郡日高村本村8)となった。

 たまたま子ども連れのお母さん方が遊びに来られていて、お話を聞くこともできた。親切なことに、山中さんという女性から「もう少し先に行ったところで『竜とそばかすの姫』の内輪がもらえますよ」と、2021年4月にオープンした日高村能津集落活動センター「ミライエ」(日高村本村226-1 屋形船仁淀川敷地内)を紹介していただいた。

 さっそくミライエキッチンに行くと『竜とそばかすの姫』とコラボした高知アイスの「ゆずシャーベット」と「天日塩ジェラート」とテイクアウト。内輪やステッカーなどもいただくことができた。ちょうど、映画『竜とそばかすの姫』公開1周年を記念して、Instagramでハッシュタグ「#舞台のモデル高知巡り」をつけて映画のモデル地を投稿するキャンペーンを実施しているところだという。
 期間が2022年7月8日(金)~11月30日(水)になっているところを見ると、本来は7月8日の金曜ロードショー『竜とそばかすの姫』テレビ放映がその幕開けとなるはずだった。それが9月23日に延期されたことは、高知県の地域おこしにとっては大打撃となったはずである。ささやかながら、弊ブログがその応援PRの一端を担えたらと紹介させていただいた。
 仁淀川流域には映画『竜とそばかすの姫』の舞台となったモデル地が他にもたくさん存在する。ぜひ聖地巡礼を楽しみつつ、土佐の歴史にも想いを馳せてほしい。

 やっと本題に入る。日高村立能津小学校およびミライエの所在地はいずれも高知県高岡郡日高村本村となっている。地名に「村」が二重に入って重複しているじゃないかと変に思われるかもしれない。「本村」とは古代における中心集落につけられる地名とされる。
 一例を挙げれば、熊本県の天草諸島、天草下島に存在していた本村(ほんむら)。1889年、町村制の施行に伴い、本村、新休村、下河内村が合併し成立。1954年、本村が本渡町、櫨宇土村、志柿村、下浦村、楠浦村、亀場村、佐伊津村と合併して本渡市が発足。その後、天草市となった現在まで、ほぼ一貫して天草地方の中心地であり続けている。
 中世においては「中村(なかむら)」地名がこれにとって変わる。高知県では四万十市の前身である中村市が良い例である。中村とは、「多くが中心となる村、もしくは分村に対する本村を意味する地名。そのため全国各地に中村地名がみられる。姓氏・地名研究家の丹羽基二によると中村地名は大字、小字までの集計でも日本全国で200件を超え、日本で一番多い地名となるという」と地名辞典に説明されている。
 さて、中山間地域で緑豊かな日高村本村の場合は、古代における中心集落であったとは、現在の姿からはとても想像しにくい。しかし、周囲を調べてみるとその片鱗が見えてくる。
 まず小学校名にもなっている「能津」。現在は地名として残っていないが、元々は「能津村」という独立した村で、旧日下村と合併後に日高村となった。 旧能津村の名越屋・宮ノ谷・鴨地・長畑・本村・大花・柱谷の7つの集落を合わせて、現在も愛着を込めて「能津地区」と呼んでいるようだ。「津」とは渡し場、船着き場を表す地名であり、仁淀川における河川交通の要所であったことがうかがえる。
 能津地区は日高村の北側、仁淀川の南側に位置する地区で、戦国時代には仁淀川の自然を利用した要害の地形を活かし、能津(細川)左兵衛の居城である能津城が築かれていた。そこから南下する道がどこにつながっているかとドライブを続けたところ、かつて火野正平さんも自転車で通ったことのある、小村神社の横の道に出てきた。これまでにも何度か言及したが、小村神社は高知県でも唯一、九州年号「勝照二年(586年)」と書かれた棟札が存在する伝統ある神社である。やはり、日高村「本村」は古代における中心集落であったようだ。
 ちなみに高岡郡日高村は、高知市の西方約16㎞の県のほぼ中央部に位置し、南は土佐市に、東と北は仁淀川を隔てて、いの町及び越知町に、西は佐川町にそれぞれ隣接している。村域は東西約8㎞、南北約9㎞、総面積は44.88平方㎞。

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『探訪―土左の歴史』第19号 (仁淀川歴史会、2023年6月)
高知県の郷土史について、教科書にはない史実に基づく地元の歴史・地理などを少しでも知ってもらいたいとの思いからメンバーが研究した内容を発表しています。
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 大学時代に『「邪馬台国」はなかった』(古田武彦著)を読んで、夜寝られなくなりました。古代史に関心を持つようになったきっかけです。
 算数・数学・理科・社会・国語・英語など、オールラウンドの指導経験あり。郷土史やルーツ探しなど研究を続けながら、信頼できる歴史像を探究しているところです。
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