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天孫降臨ーー筑紫の日向は「ひゅうが」か「ひなた」か?
 ニニギノミコトが降り立ったという天孫降臨の地はどこだろうか。通説では九州の日向(今の宮崎県)の高千穂のクジフル嶺(たけ)、あるいは霧島山とされている。また『古事記小事典 古代の真相を探る』は薩摩半島笠沙町や筑紫(福岡県)の日向峠等へ降り立ったとする説なども紹介している。


 専門家は天孫降臨を単なる神話と見る向きもあって、正面から歴史研究の対象とされることは少なかった。これに対して、古田武彦氏は『盗まれた神話』(昭和54年)で、学問の研究対象として取り上げ、筑紫(福岡県)の日向峠へ降り立ったとする天孫降臨の真相を解き明かしたのであった。
 ところで、日向には「ひゅうが」「ひむか」「ひなた」など、いくつかの読み方が存在する。天孫降臨の地、日向はどう読むのだろうか。
 通説では筑紫を九州島と解釈し、宮崎県の日向(ひゅうが)に当ててきた。ひと昔前はサッカー漫画『キャプテン翼』の大流行で主人公・大空翼のライバル日向(ひゅうが)小次郎の存在感もあってか、「ひゅうが」読みが一般的であった。
 最近ではアニメ『ハイキュー!!』の主人公・日向(ひなた)翔陽、アイドルグループ日向(ひなた)坂46の人気も一役買って「ひなた」読みが市民権を得てきたように感じる。不思議なことに、「日向坂46」のグループ名は、東京都港区三田に実在する「日向坂(ひゅうがざか)」に由来しているという。ひらがなにした時に、「ひゅうがざか」よりも「ひなたざか」の字画の方が運勢的に良いため、「ひなたざか」になったそうだ。実は日向坂(ひなたざか)自体も、埼玉県さいたま市に実在している。
 『古事記』には「竺紫の日向の高千穂のくしふるたけに天降りまさしめき」とあり、この天孫降臨の場所について、古来より宮崎県(日向)の高千穂などに比定されてきた。しかしこの通説には疑問がある。古田氏は「天孫降臨神話」は大和朝廷の史官による創作ではなく、「歴史上の事実を“本質的に”反映している。それは紀元前二~三世紀頃、朝鮮海峡を拠点とする天照や邇邇芸命ら海人(あま)族による、稲作が盛んだった豊穣の地(豊葦原水穗国とよあしはらみずほのくに)“博多湾岸”への青銅の武器を携えての侵攻だった」とした。創作された神話なら降臨場所はどこでも構わないだろうが、史実の反映と見るならば、周辺に紀元前にさかのぼる弥生時代の遺跡がなければならない。
 その点、遺跡が密集する糸島郡と福岡平野の境付近の日向峠とする古田説は有力である。しかも『古事記』にはこの場所について重要なヒントが示されていた。「此の地は韓国に向ひ、笠沙の御前を真来通りて、朝日の直刺す国、夕日の日照る国なり。故、此地は甚吉(いとよ)き地(ところ)」と書かれている。
「此の地(糸島郡、高祖山付近から望む)は
①(北なる)韓国に向かって大道が通り抜け、
②(南なる)笠沙の地(御笠川流域)の前面に当たっている。そして、
③(東から)朝日の直に照りつける国、
④(西から)夕日の照る国だ」
 この文章は「四至」文だったと古田氏は指摘する。後に荘園立荘の際などに四至を定めて場所を確定するのに似ている。この文面は玄界灘に面し、韓国に直行できるような場所にこそふさわしい。その点、宮崎県や鹿児島県などには違和感しかなく、周囲の遺跡の状況ともそぐわない。
 慶長年間の福岡恰土郡高祖村椚(くぬぎ)に関する黒田家文書に「五郎丸の内、日向山に、新村押立」とあり、『福岡県地理全誌』恰土郡には「民家の後に、あるを、くしふる山と云」とあることから、糸島郡の有名な三雲遺跡の近辺、高祖連山一帯の地が「日向山」と考えられる。
 余談になるが、古田氏は「くしふる→くぬぎ」音の転訛説は、無理な俗説としており、同感である。高知県にも複数見られる「くぎぬき」地名が「くぎぬき→くぬぎ」と転訛したものではないだろうか。いずれにしても天孫降臨の地「筑紫の日向」とは、“宮崎の日向(ひゅうが)”ではなく、“福岡県の日向(ひなた)峠”一帯を指していたと結論づけたい。

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【2021/09/09 11:45 】 | 地名研究会 | 有り難いご意見(0)
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