もう5年前になるだろうか。『古田史学会報136号』(2016年10月)に、西村秀己氏の論考「南海道の付け替え」が掲載された。九州王朝から大和朝廷への政権交代の画期を示すONライン(701年)の存在を強く印象付けるものであった。
土佐国の古代官道については、718(養老二)年以前は伊予国経由の西回りであったものが、718年に阿波国を経由するルートに変更された。これが九州王朝から大和朝廷への政権交代によるものとする「南海道の付け替え」である。この718~796年におけるコース(養老官道)については、これまでいくつかの説が出されていたが、吉野川や那賀川沿いといった内陸部を通るルートはほぼ否定されている。
現段階では、徳島県の海岸部をたどり、室戸岬は避けて野根山街道を経由し、やはり高知県の太平洋岸に近いルートを通ると推測されている。その根拠としては、735(天平七)年の「阿波国那賀郡武芸駅(海部郡牟岐)」木簡、および高田遺跡(香南市野市町)における古代官道遺構の発見などがあげられる。
それだけに、同論考に添えられた「新・旧土佐への交通路」とする地図には、少し残念な思いがあった。掲載直後、西村氏には「阿波(徳島)ルートが違ってますよ」とご忠告申し上げておいた。同地図が『古田史学論集』にそのまま掲載されることを危惧し、間違い部分だけでも修正してほしかったからである。
厳密に言うと、伊予(愛媛)ルートも主流説ではない。代表的な説として、①ほぼ現在の国道33号が通る内陸路線(日野尚志説)や②海岸を大きく周回する路線(足利健亮説)などが出されている。通説が正しいとは限らないけれども、先行研究を無視したルートを示しても、既存の学者たちを納得させることはできない。
批判じみたことになるので、あまり言わずにおこうとも考えていたが、最近『市民古代史の会・京都』における「古代官道の研究」と題する講演会(下記ユーチューブ動画参照)で、先の地図がそのまま使用されていたようなので、僭越ながら多少なりとも注意を促しておきたい。
厳密に言うと、伊予(愛媛)ルートも主流説ではない。代表的な説として、①ほぼ現在の国道33号が通る内陸路線(日野尚志説)や②海岸を大きく周回する路線(足利健亮説)などが出されている。通説が正しいとは限らないけれども、先行研究を無視したルートを示しても、既存の学者たちを納得させることはできない。
批判じみたことになるので、あまり言わずにおこうとも考えていたが、最近『市民古代史の会・京都』における「古代官道の研究」と題する講演会(下記ユーチューブ動画参照)で、先の地図がそのまま使用されていたようなので、僭越ながら多少なりとも注意を促しておきたい。
主催:市民古代史の会・京都(代表:山口哲也)古代官道の不思議発見@古賀達也@市民古代史の会・京都@キャンパスプラザ京都@20211123@29:01@DSCN9280
https://youtu.be/kFagnmfvpCg
土佐国の古代官道については、718(養老二)年以前は伊予国経由の西回りであったものが、718年に阿波国を経由するルートに変更された。これが九州王朝から大和朝廷への政権交代によるものとする「南海道の付け替え」である。この718~796年におけるコース(養老官道)については、これまでいくつかの説が出されていたが、吉野川や那賀川沿いといった内陸部を通るルートはほぼ否定されている。
現段階では、徳島県の海岸部をたどり、室戸岬は避けて野根山街道を経由し、やはり高知県の太平洋岸に近いルートを通ると推測されている。その根拠としては、735(天平七)年の「阿波国那賀郡武芸駅(海部郡牟岐)」木簡、および高田遺跡(香南市野市町)における古代官道遺構の発見などがあげられる。
そして土佐国府から北に向かう北山越え(大豊、川之江方面経由)に変更されたのは796(延暦十五)年であり、これが延暦官道としてその後『延喜式』などにも記録されている。西村氏による「新・旧土佐への交通路」の地図は、具体的な距離の算定や九州王朝説を印象づける意味では分かりやすいものだが、実際の古代南海道ルートと誤解される恐れがある。使用される際には既存の説を理解した上での例示にとどめてほしい。
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朱儒国民
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非公開
職業:
塾講師
趣味:
将棋、囲碁
自己紹介:
大学時代に『「邪馬台国」はなかった』(古田武彦著)を読んで、夜寝られなくなりました。古代史に関心を持つようになったきっかけです。
算数・数学・理科・社会・国語・英語など、オールラウンドの指導経験あり。郷土史やルーツ探しなど研究を続けながら、信頼できる歴史像を探究しているところです。
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