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 高知県安芸市僧津の瓜尻(うりじり)遺跡で官衙の一部とみられる柵と溝に囲まれた方形建物区画跡や古代の瓦などが見つかったことが、高知新聞(2021年1月16日)で報じられた。

瓜尻遺跡に古代役所

安芸市 大規模水路、倉庫群も
統合中建設地
 高知県安芸市僧津の統合中学校の建設予定地で昨年9月から発掘調査が行われている瓜尻(うりじり)遺跡で、古代律令(りつりょう)制下の官衙(かんが)(役所)とみられる建物群が見つかっている。県東部では官衙とみられる遺跡は初確認で、県内9例目。安芸郡の統治に関わった豪族の拠点が周辺に広がっているとみられ、未解明の県東部の古代史を解き明かす遺跡として研究者の注目を集めている。
 出土した土器から、建物は7世紀後半から8世紀まで建て替えが続いたと見られているが、土器編年は相対的なもので、四国では編年に50年程度のずれが生ずる場合がある。
 島根大学の大橋泰夫教授(考古学)は「寺院に隣接して官衙が見つかった点が重要」「郡衙にしては規模が小さく、郡内に複数設置された郡衙の支所『館(たち)』の可能性がある」などとコメントしている。

 実はこれに先立つこと2020年7月には「安芸市に7~10世紀古代寺院の仏塔」との見出しで、統合中学校建設予定地の瓜尻遺跡で白鳳瓦などが出土したことが報じられている。一般的には「豪族の氏寺か」とする見解であるが、安芸市においてもONライン(701年)以前のいわゆる九州王朝時代の古代寺院の存在が浮かび上がってきた。安芸郡奈半利町の古代寺院と推定されていたコゴロク廃寺との関連も気になるところだ。
 『続日本紀』によると、はじめ讃岐国から伊予国を経由して土佐国府(南国市比江)に達していた古代官道が、阿波国経由の野根山街道に切り替えられたのは718年(養老二年)であり、その後796年(延暦十五年)の北山街道に変わるまでの8世紀の大半は、安芸郡を経由していたことになる。それだけに今回の発見は、古代官道に置かれた駅家を支える安芸郡家の一端を知る手がかりとなりそうだ。
 『瓜尻遺跡』(安芸市教育委員会、2005年3月)によると「高知県内で8世紀代を含めて古代に属する掘立柱建物は、香長平野に多く確認されており、南国市の土佐国衙跡、田村遺跡群、白猪田遺跡、野市町の曽我遺跡、深淵遺跡、下ノ坪遺跡、香我美町の十万遺跡などで確認されている。…(中略)…井ノ口周辺には8世紀には集落が存在していることを確認することができた。また近年徐々に調査事例が増え、瓜尻遺跡の南側に所在するジョウマン遺跡では道路拡張に伴う発掘調査が行われ、5世紀代前半の溝跡が検出されており、平野部の利用がこの時期には行われていたことが報告されている」とある。
 安芸市は高知県における銅矛出土の最東端でもあり、安芸郡とキ族とのつながりを指摘する研究者もいる。高知県の沿岸部には「~き」とする地名が多く分布しており、ほとんどが風よけの港と対応していることから、言素論的には「天然の港」のような意味と解する説もある。5世紀代前半には安芸川流域の平野部が利用されていたことから、倭の五王時代の前線基地であった可能性すら想像させる。さらなる発掘調査に期待したいところだ。


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無題
侏儒国民さんへ
肥さんです。
瓜尻遺跡のことを「肥さんの夢ブログ」で
取りあげさせていただきました。
ありがとうございます。
肥さん 2021/02/07(Sun)01:15:25 編集
Re:無題
肥さんへ

>瓜尻遺跡のことを「肥さんの夢ブログ」で
>取りあげさせていただきました。

 早速、取り上げていただきありがとうございます。方位についても調べて下さったようですね。また、山田氏より素弁八葉蓮華文との鑑定、感謝です。
 これを白鳳瓦と表現するのは古さというより、白鳳時代を8世紀にずれ込ませたい意図があるのではないかと感じるところもあります。
 また分かることがあったら発信させていただきます。
2021/02/07 09:27
無題
侏儒国民さんへ
興味深い遺跡ですね。
「夢ブログ」で紹介させていただきます。
肥さん 2021/02/07(Sun)23:02:20 編集
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 大学時代に『「邪馬台国」はなかった』(古田武彦著)を読んで、夜寝られなくなりました。古代史に関心を持つようになったきっかけです。
 算数・数学・理科・社会・国語・英語など、オールラウンドの指導経験あり。郷土史やルーツ探しなど研究を続けながら、信頼できる歴史像を探究しているところです。
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