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 古田武彦氏は四国南西部の足摺岬付近を『魏志倭人伝』に書かれている侏儒国と比定した。『歴史地震の話―語り継がれた南海地震』(2012年)の著者で地震学者の都司嘉宣氏などは古田説を支持する立場のようである。一方、古田史学の会・東海の石田泉城氏からは侏儒国を種子島に比定する説が出されており、足摺岬付近を侏儒国とする古田説は誤りと考えているようだ。足摺岬付近を侏儒国とするのは是だろうか、それとも非とすべきだろうか?

 侏儒国を足摺岬付近に比定した古田説の出発点は『魏志倭人伝』の記述に従ったところにある。さらには「裸国・黒歯国」すなわち南米への渡航との関連から、いくつかのデータを積み重ねている。『真実に悔いなし』(古田武彦著、2013年)には「唐人石実験」(P228)について、次のように書かれている。
 もう一つの実験があった。唐人駄場は、中心の広場である。その唐人駄場の一画、海を“見おろす”ような位置に「唐人石」がある。この中心列石は、黒潮に乗って北上してきた人々の「目」に反射して「見える」のではないか、という「?」だった。
 いち早く、黒潮が断崖に衝突する前に、その存在を確認するか否か。それが彼らの「生死」を分けるのである。言うなれば、「縄文灯台」としての役割だ。その可能性を、船上実験したのである。予備実験と本番と、二回とも成功だった。明らかに、縄文期に、この地域は「黒潮と日本列島との結節点」だった。それを確認したのである。

 「~駄場」という地名は四国南西部に分布しており、「山頂や山腹の平らな場所」を指す。多くの場合、縄文遺跡が出土することが指摘されている。唐人駄場もやはり足摺岬の台地上にあり、縄文時代の石鏃出土においては群を抜いている。やや南に下った場所には世界最大級(直径150m以上)のストーンサークル(現在は公園)があったとされる。

唐人駄馬
▲唐人駄場遺跡の巨石群

 足摺岬付近から太平洋を横断して南米大陸へ。遺伝子の研究などでも現在のインディオから採取した遺伝子と現在の日本の太平洋岸の日本人の遺伝子が一致するという。現在だけでなく千何百年前のチリのミイラの示す遺伝子とも一致しているのだ。
 果たして、足摺岬付近の縄文人と南米との交流があったのだろうか。期待は高まる。地元の土佐清水市も唐人駄場遺跡をはじめとして観光のスポットにしたいとの思惑もあったかもしれない。ベティー・J・メガーズ博士を招請したときの話である。
 メガーズ夫人をお呼びしたときのこと。高知県の土佐清水市が(わたしを通じて)招請したのである。足摺岬近辺の縄文土器を夫人に観察してもらい、南米のものとの「共通性」の有無を判定してもらったのだ。だが、運ばれてくる(足摺岬近辺の)縄文土器に対して、夫人はいずれも「否(ノウ)」だった。せっかくの(土佐清水側の)期待を“裏切った”のである。(同著P247)
 自説に不利な情報であっても隠すことなく、公開している。この一点を見ても古田武彦氏の真実に対する姿勢や学問的良心を感じ取ることができる。
 南米エクアドルのバルディビア遺跡からは縄文土器によく似た土器が出土している。それは漂流によってもたらされたものではなく、火山の噴火により被害を受けた地域からの集団移民によるものとの説が有力である。「熊本県、中心の一派」が、黒潮に乗じて「南米への大移住」を図ったと古田氏は考察している。
 少なくとも足摺岬付近の縄文人は「裸国・黒歯国」への移民の中心勢力ではなかったということだろう。遺跡の分布から判断すると、この地域では弥生時代になると四万十川流域に文化の中心がスライドし、そのまま古墳文化へと連続しているように見える。民族大移動までは必要なかったのかもしれない。ただし、四万十市西土佐の大宮・宮崎遺跡から出土した線刻礫については、バルディビア遺跡の線刻礫との共通性および同時代性が指摘されており、交流がなかったわけでなさそうである。


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朱儒国民
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非公開
職業:
塾講師
趣味:
将棋、囲碁
自己紹介:
 大学時代に『「邪馬台国」はなかった』(古田武彦著)を読んで、夜寝られなくなりました。古代史に関心を持つようになったきっかけです。
 算数・数学・理科・社会・国語・英語など、オールラウンドの指導経験あり。郷土史やルーツ探しなど研究を続けながら、信頼できる歴史像を探究しているところです。
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