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 毎週日曜放送のアニメ『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』第23話で、ついにフィットア領へと戻ってきたルーデウスたち。故郷のブエナ村は荒地になり、ボレアス家のあったロアの街も難民キャンプとなっていた。「まずは井戸づくりですな。ここは川まで少し離れていますので、皆苦労しております」と主人公ルーデウスは依頼される。
 ふつうは近くに川がないから井戸を掘る。けれども、古代において国内最大級とされる直径9.5メートルの瓜尻(うりじり)遺跡の井戸は接岸施設を伴う水路遺構の近くで見つかった。その解釈に専門家も悩んでいるのが正直なところであろう。
 安芸市僧津の統合中学校建設地内の「 瓜尻遺跡」(古墳~平安期)について考える講演会が、12月12日に安芸市民会館で開かれた。考古学者で滋賀大名誉教授の小笠原好彦氏が「大化の改新以後、中央に税を納めるための流通拠点。米やカツオ、塩などが集まり、絹織物の工房があったのだろう」と、集まった約160人に見解を披露した。小笠原氏は「豪族の居館や 郡衙(地方に設けられた役所)にしては規模が小さい」と指摘。井戸のある23m四方の区画には塀が巡らされ、門が設けられた南側には建物の遺構が全くない点に注目。流通拠点や絹織物の工房があった場所との見立てを述べたことが、『読売新聞』(2021年12月15日)の記事から読み取れる。
 当日講演会に参加した方からも「23m四方の方形区画や船着き場や運河を配する構成から、調の集積場ではなかったか」と同様の趣旨の情報提供があった。いただいたコメントに「井戸との関連はまだわからないとも。 解明できそうもないものは祭祀遺構にする話は少し笑いました!」とあり、講演会の様子が伝わってきた。発見当初、安芸市教育委員会は「神聖な行事のための水として使われていたのでは」と推測した経緯もあり、小笠原氏は井戸と祭祀との関連は疑問視しておられるようだ。

 「大化の改新以後、中央に税を納めるための流通拠点」あるいは「公的な市」とする小笠原説はたいへん興味深いところだ。近くには三菱財閥の創業者・岩崎弥太郎の生家があり、この地から日本の水運業、ひいては実業界を担う人物が現れたのは歴史の同時性(歴史は繰り返す)というものか。
 ただし、645年の「大化の改新」については疑問点も多く、多元史観では大宝律令(701年)が大和朝廷による中央集権体制のスタートとされる。そうなると、7世紀代における瓜尻遺跡の存在意義は近畿天皇家との関係を抜きにして考えなければならないだろう。

 ところで、岩崎弥太郎の生家の住所は安芸市井ノ口甲一ノ宮。「井ノ口」とは主に用水取水口の地名であり、伏流水となる前の地点で用水路に確保する所である。瓜尻遺跡の周辺は安芸条里の北端部にあたり、条里の中央付近には「ミヤケダ」地名もある。安芸条里の灌漑施設を管理運営する上で、安芸川からの取水口となる場所が重要とされたと考えられる。そのことは一ノ宮古墳や一宮神社(安芸郡の一ノ宮、土佐国の一ノ宮は「しなね様」で有名な土佐神社)が存在し、古代寺院が存在していたことが明らかになったことでも理解できる。
 AI(人工知能)の登場で囲碁界ではプロ棋士が教えてきたことが、必ずしも正しいとは限らないことが明らかになってきた。古代史の解明にも先入観を持たないAIを導入してみたいものだ。Hey Siri(ヘイ、シリ)教えて「瓜尻遺跡」。


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 大学時代に『「邪馬台国」はなかった』(古田武彦著)を読んで、夜寝られなくなりました。古代史に関心を持つようになったきっかけです。
 算数・数学・理科・社会・国語・英語など、オールラウンドの指導経験あり。郷土史やルーツ探しなど研究を続けながら、信頼できる歴史像を探究しているところです。
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